戦略ゲーム

ウイングスパン徹底レビュー|鳥エンジンビルドと拡張3種

公開日: 著者: 相沢 遼介
戦略ゲーム

ウイングスパン徹底レビュー|鳥エンジンビルドと拡張3種

ウイングスパンは、鳥愛好家となって野鳥を集め、得点が増える仕組みを自分で組み上げる中量級の拡大再生産ゲームである。1〜5人・40〜70分・10歳以上で遊べ、2019年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門と2020年のゴールデンギーク賞をダブル受賞した実力は、レビューの土台としてまず押さえておきたい。

ウイングスパンは、鳥愛好家となって野鳥を集め、得点が増える仕組みを自分で組み上げる中量級の拡大再生産ゲームである。
1〜5人・40〜70分・10歳以上で遊べ、2019年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門と2020年のゴールデンギーク賞をダブル受賞した実力は、レビューの土台としてまず押さえておきたい。

このゲームの面白さは、170種すべて能力が被らない鳥カードと、餌箱型ダイスタワーや卵トークンの手触りに支えられた「軽いのに深い」バランスにある。
ゲーム会で初めてエンジンがつながり、1手番で餌から産卵、さらにドローまで連鎖した瞬間に思わず声が出た、あの快感がそのまま核になっている。

ただし、強力カードや初手のボーナスカードで展開が傾きやすく、3人以上では待ち時間も気になる。
とはいえ、序盤は餌、中盤はエンジン、終盤は得点源という優先順位を押さえれば、引き運はかなりならせる。

欧州の翼・大洋の翼・東洋の翼という3つの拡張は、カード追加型、システム改変型、独立型と性格がはっきり分かれるため、どれから買うかは遊ぶ人数とプレイスタイルで変わってくる。
本記事では、その違いを整理しながら購入判断と初心者攻略を一気に進めましょう。

結論:エンジンビルド入門の決定版、ただし引き運との付き合い方がカギ

ウイングスパンは、中量級エンジンビルドの入門に最も薦めやすい一作だと断言できる。
手番で行うことは4アクションから1つ選ぶだけで、流れをつかめば初心者でも1〜2回で骨格を理解しやすい。
1〜5人、40〜70分、10歳以上という広い適性も扱いやすく、家族卓からゲーマー会まで橋渡し役になりやすい作品です。

目的別おすすめ早見表:こんな人にはこの一作

まず即答すると、鳥や自然テーマが好きな人には最高の没入感があり、エンジンビルド入門者にはまずこれと言える。
妨害や対戦の緊張感を求める重ゲー上級者には薄味に映る場面があり、ソロ・2人派には満足度が特に高い。
筆者が初心者に最初の中量級を聞かれたとき、ほぼ毎回ウイングスパンを挙げてきたのは、実際に何人もの初心者が「気づいたら自分の盤面を育てるのが楽しい」とハマっていったからだ。

プレイヤー像相性理由
鳥や自然テーマが好きな人最高170種の鳥カードが1枚も能力被りを起こさず、図鑑をめくるような楽しさがある
エンジンビルド入門者まずこれ4アクションから1つ選ぶだけで、盤面が少しずつ回り始める感覚を掴みやすい
妨害や対戦の緊張感を求める重ゲー上級者物足りない可能性直接殴り合う設計ではなく、構築の気持ちよさが主役になる
ソロ・2人派特に高相性ダウンタイムの影響が小さく、盤面づくりに集中しやすい

重ゲー好きの仲間内では「インタラクションが薄い」と評価が割れたのに、鳥好きの友人は一発でファンになったこともある。
つまり、このゲームは好みを選ぶが、刺さる相手にはかなり深く刺さる。

推薦度と総合スコアの根拠

推薦度は高い。
理由は、ゲームの入口が軽いのに、遊ぶほど盤面の伸びしろが見えてくる設計にあるからだ。
森で餌を集め、草原で産卵し、湿地でカードを引く3つの生息地レーンが噛み合うと、毎手番の選択が少しずつ効いてくる。
2019年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門大賞と2020年ゴールデンギーク賞大賞のダブル受賞も、単なる話題性ではなく、完成度の裏付けとして納得しやすい。

全170種の鳥カードが1枚も能力を被らない設計も見逃せない。
カードを引くたびに新しい組み合わせが生まれ、同じゲームでも毎回ちがうエンジンが立ち上がるため、遊び手は「次はこの鳥を軸に組もう」と自然に考え始める。
そこに卵トークン75個、専用ダイス5個、餌箱型ダイスタワー、212枚のカード類といった手触りのあるコンポーネントが加わり、数字以上に満足感が残るのである。

『運ゲー』という評判をどう捉えるか

『運ゲー』という評判には正面から向き合うべきだろう。
引き運は確かにあるが、ラウンド別の立ち回りでかなりならせる。
序盤は餌、中盤はエンジン、終盤は得点源へ重心を移し、ボーナス条件を先読みしながら、餌レーンに配置時効果、産卵レーンに起動時効果を置く定石を作ると、運の波はだいぶ扱いやすくなる。

だから、評判だけで敬遠するのは惜しい。
ウイングスパンは「運があるから雑」なゲームではなく、「運を受け止めつつ、手順で勝ち筋を整える」ゲームです。
後段の攻略では、この引き運をどう受け流し、どこで得点差に変えるかを掘り下げていく。

どんなゲーム?鳥を集めて得点エンジンを作る拡大再生産

ウイングスパンは、鳥愛好家として野鳥を集め、自分の保護区を育てていくゲームです。
戦争や経済を正面から扱わず、鳥を眺め、迎え入れ、盤面を整えること自体が遊びの中心にあるため、テーマのやわらかさと没入感が同時に立ち上がります。
しかも鳥カードのアートと生息地考証の作り込みが強く、机の上で図鑑をめくるような気分になるのが魅力でしょう。

鳥愛好家になる、というテーマの没入感

このゲームでは、プレイヤーは鳥愛好家となって自分の保護区に野鳥を集めていきます。
題材が牧歌的なので、勝敗の前に「この鳥を置きたい」「この並びを眺めたい」という気持ちが自然に湧くのが面白いところです。
初めて遊んだとき、鳥カードのアートと実際の生息地考証の正確さに見入ってしまい、戦略そっちのけでカードを眺めていたことがあります。
見た目の良さが飾りではなく、ゲームの入り口そのものになっているのです。

エンジンビルドとは何か:仕組みが仕組みを呼ぶ快感

エンジンビルドとは、得点や資源が増える仕組みを自分で組み上げることです。
ウイングスパンでは鳥を1枚置くたびに、次の手番で得られる餌・卵・カードが増え、前の選択が次の選択肢を太らせていきます。
森は餌獲得、草原は産卵、湿地はカードドローと役割が分かれており、鳥を並べるほどレーンが強化される設計が気持ちいい。
鳥カード下に差し込んだカード・卵・餌が各1点ずつ得点になるので、成長と得点化がひとつの流れでつながり、拡大再生産の快感がそのまま勝ち筋になります。
手番でできるのは「鳥を出す・餌を獲る・産卵する・鳥カードを引く」の4アクションから1つだけで、ワーカープレイスメントや重量級ユーロを遊び慣れた目線でも、この4択のシンプルさが逆に「何を捨てるか」の判断を鋭くしていると感じます。
選択肢が絞られているからこそ、初心者でも迷子になりにくいのに、先を見据えるほど深みが増すのです。
おすすめです。

妨害ゼロ設計が生む独特のプレイ感

他プレイヤーを直接妨害する要素がほぼ無く、むしろ他人の手番で恩恵を受けられる場面もあります。
だから盤面を見る視線が攻撃ではなく構築に向き、自分の保護区をどう伸ばすかに集中できるのです。
3人以上だと手番間の待ち時間は気になりますが、読み合いの矢印が相手ではなく自分のエンジンに戻ってくるので、対戦というより“ひとりで最適化を積む”感覚が強い。
ソロゲーム感覚で遊べるこの設計は、妨害が苦手な層にも刺さりやすいはずです。
おすすめしますし、静かな盤面づくりを楽しみたい人には特に合っています。

ルールの骨格:4ラウンド・アクション数逓減の緊張感

4ラウンド制の『ウイングスパン』は、手番の多さそのものが最大の資源です。
ラウンドが進むほど実行できるアクション数は8、7、6、5と減っていくため、序盤に整えた盤面が後半の失速をどこまで補えるかが勝負を分けます。
だからこそ、早い段階で何を伸ばすかを見誤ると、終盤は驚くほど動けなくなるのです。

アクション数が減るからこそ序盤投資が効く

このゲームでは、ラウンドごとに使えるアクション数が1ラウンド8、2ラウンド7、3ラウンド6、4ラウンド5と1つずつ減っていきます。
見た目は静かなルールですが、実際には鋭い圧力を生みます。
序盤の1手で餌を確保し、次の1手で鳥を出し、さらに盤面を伸ばせるかどうかで、後半の失速具合がまるで変わるからです。
筆者も初プレイでは卵集めに早く走りすぎ、餌エンジンが育たないまま4ラウンド目を迎えて手番が回らず大敗しました。
逆に、序盤を餌とドローに寄せた回は、4ラウンド目に1手番で複数の連鎖が起きて一気に逆転できました。
逓減ルールは、ただ短くなるだけではありません。
準備を急ぐほど報われる設計であり、序盤投資の価値をはっきり見せる仕組みです。

3つの生息地レーンと『列が育つ』感覚

盤面は森・草原・湿地の3つの生息地レーンに分かれ、森で餌獲得、草原で産卵、湿地でカードドローと役割が固定されています。
鳥を左から並べていくほど、そのレーンのアクションが強化されるため、1枚の配置が次の行動力を押し上げるのが面白いところです。
単に鳥を置いて終わりではなく、列が少しずつ育ち、同じ行動がより重く、より効率よく回り始める。
この拡大再生産の手触りが、『ウイングスパン』の気持ちよさを支えています。
どのレーンを先に伸ばすかで手番の価値が変わるので、目先の1点より、列の成長を見据えた配置が効いてきます。

得点はどこから生まれるか

得点源は1つではありません。
鳥カード自体の点に加え、卵1個1点、鳥カード下に差し込んだカード、余った餌、ボーナスカード、各ラウンドの目的タイルが重なっていきます。
どれか1本だけを極端に伸ばすより、終盤にまとめて点になる入口を複数持っておくほうが安定します。
たとえば鳥の点を取りにいくなら、配置した列の伸びと噛み合わせたいですし、卵を増やすなら草原の回転が前提になる。
目的タイルも毎ラウンドの足場を変えるので、同じ展開でも点の入り方が変わります。
どこを伸ばすかはそのまま戦略の分岐点であり、少ない手番で何を残すかが中級者への入口になります。

良い点:圧倒的なコンポーネントとエンジンが回り出す爽快感

ウイングスパンの良さは、まず箱を開けた瞬間の満足感にあります。
餌箱型ダイスタワーや卵トークン75個、専用ダイス5個、カード類212枚という物量が、単なる豪華さではなく「この世界に触れる」感覚を作っているからです。
見た目のインパクトが先に立つのに、手触りや操作の一つひとつがルール体験へきれいにつながる。
そこが高評価ダブル受賞の土台でしょう。

触って楽しいコンポーネントの作り込み

餌箱型ダイスタワーから餌ダイスを転がすたび、ただ資源を得るだけの処理が小さな演出に変わります。
ダイスが傾斜を落ちていく音、卵トークンを並べたときの密度、212枚のカードを束ねたときの厚みまで含めて、遊ぶ前から楽しい。
複数のエンジンビルド系を遊んできた中でも、初心者が初回から「気持ちよさ」を掴みやすい作品は多くありません。
ウイングスパンは、その導入のうまさで抜けています。

ルールは軽いのに毎回違うリプレイ性

170種の鳥カードは1枚も能力が被らない設計で、毎回の配牌がそのままゲームの性格を変えます。
毎回まったく別物になるわけではないものの、手札次第で優先順位が変わるため、同じ戦略の焼き直しになりにくいのが強みです。
1〜2回通しでプレイすればルールの骨格はほぼ見えてきますが、そこから先は「どの鳥を軸にするか」「どのレーンを伸ばすか」で選択の幅が広がる。
軽さと深さが同居しているから、初めての人も誘いやすく、遊ぶたびに手応えが残ります。

エンジンが繋がった瞬間の手応え

鳥を置くたびにレーンが強化され、ある瞬間から1手番の中で餌を得て、産卵し、さらにドローまでつながる流れが生まれます。
この「回り出した」感覚こそが本作最大の魅力で、エンジンビルドの教科書のような快感です。
単に強い手を打つのではなく、前の手番の準備が次の手番で一気に返ってくるので、プレイヤーは自分の鳥たちが噛み合っていく過程そのものを楽しめます。
導入は軽く、終盤はしっかり深い。
だから長く遊ばれるのです。

気になる点:カードの引き運とダウンタイム

引き運はこのゲームの弱点としてはっきりしています。
強力なカードや初手のボーナスカードが噛み合うかどうかで展開は傾き、上級者同士でも手札の差が勝敗を分ける場面が出てきます。
しかも一部の鳥、とくにコンボの核になるカードが早めに来ると盤面が一気に伸びるため、理詰めで積み上げる楽しさと同時に、理不尽さを感じる余地も残るのです。

引き運をどこまで実力でならせるか

この運要素は、単に「運ゲー」と切り捨てるには少し雑です。
初手で噛み合う鳥を引けなかった回でも、餌の回し方や列の伸ばし方を丁寧に整えると、被害を最小限に抑えて差を詰められる場面がありました。
引きそのものは動かせなくても、手元の資源をどの順で使うか、どの鳥を優先して置くかで見える景色は変わります。
だからこそ、運をゼロにするゲームではなく、運の振れ幅を受け止める設計だと見るほうが自然でしょう。

人数が増えるほど効くダウンタイム

3人以上になると、各プレイヤーが自分の盤面をじっくり確認する時間が増え、手番待ちのダウンタイムが目立ちやすくなります。
筆者が4人で遊んだときも、強力なエンジンを早々に組み上げたプレイヤーほど手番ごとの選択肢が増え、結果としてその人の手番が長くなり、卓全体の間延びを招きました。
しかもプレイヤー間の直接干渉はほぼ無いので、他人の手番を見て状況が激変する緊張感は薄めです。
テンポの速い応酬を期待すると、少し物足りなく感じるかもしれません。

妨害好きには物足りない可能性

この弱点は、裏を返せば「誰には向かないか」を示しています。
相手の計画を崩したり、読み合いで圧をかけたりする駆け引きを求める人には、静かに映るはずです。
とはいえ、2人プレイならダウンタイムは気になりにくく、引き運も後段の攻略でならしていけます。
要するに、欠陥というより相性の問題です。
妨害の濃い対戦をおすすめしたい人には別の選択肢があるし、盤面を整える気持ちよさを味わいたいなら、こちらはおすすめできます。

拡張3種を比較:欧州・大洋・東洋はどれから買うべきか

欧州の翼、大洋の翼、東洋の翼は、どれも「ウイングスパン」の体験を広げる拡張ですが、広がり方がまるで違います。
基本セットの延長線で遊びたいなら欧州の翼、ルールの手触りごと変えたいなら大洋の翼、少人数中心なら東洋の翼が軸になります。
購入順は内容だけでなく、何人で遊ぶかで逆転するのが面白いところです。

拡張3種ひと目比較表

拡張名タイプ必要なもの主な追加要素システム改変度おすすめ度向いている人
欧州の翼カード追加型基本セット必須ヨーロッパの鳥81種、ラウンド終了時能力最初の1つに最有力基本の遊び心地を保ったまま厚みを足したい人
大洋の翼システム改変型基本セット必須新エサ「花蜜」、新しいプレイボード2つ目以降におすすめ基本を遊び込み、別の手触りを試したい人
東洋の翼独立型基本セット不要1〜2人専用の別設計2人以下なら有力ソロや2人で安定して遊びたい人

この3つを比べると、違いは「追加量」ではなく「何を変える拡張か」にあります。
欧州の翼は基本セットの気持ちよさを崩さずに選択肢を増やし、大洋の翼は資源と盤面の前提から組み替え、東洋の翼は遊ぶ人数に合わせて土台そのものを分けています。
だからこそ、まずは自分の卓が何人で回るかを基準に考えると迷いにくいでしょう。

欧州の翼:基本を素直に増量するカード追加型

欧州の翼は、ヨーロッパの鳥81種を加え、『ラウンド終了時』に発動する新しい能力タイミングを導入するカード追加型です。
基本セットの骨格はそのままなので、覚えることが増えすぎず、それでいて手番の終わりに考える要素が増えます。
筆者が基本セットを数十回遊んだ後にこの拡張を入れたときも、終盤の計算が一段深くなり、「まだこのゲームは伸びる」と感じられました。
最初の1つとして無難なのは、派手さよりも安定して遊び心地を押し上げるからです。

大洋の翼:手触りを作り替えるシステム改変型

大洋の翼は、新エサ『花蜜』と新しいプレイボードで、ゲーム全体の設計をチューニングし直す拡張です。
単にカードを足すのではなく、何を集め、どこで迷い、どの盤面を使うかまで変わるので、基本に慣れた仲間ほど反応が分かれやすいでしょう。
初回に入れた卓では、花蜜とプレイボードの変更に戸惑い、「別ゲーに近い」と評する声も出ました。
だからこそ、これは基本を遊び込んでマンネリを感じたあとに試すと面白く、2つ目以降に薦めやすい拡張です。
おすすめです。

東洋の翼:少人数特化の独立型という別枠

東洋の翼は、1〜2人専用に設計された独立型で、基本セット無しでも遊べる別枠の存在です。
大人数でワイワイ遊ぶ拡張ではなく、少人数での読み合いと手堅い最適化に寄せてあるため、ソロや2人プレイが中心なら、むしろこれ単体のほうが刺さる場合があります。
基本セットを持っているかどうかより、実際に何人で卓を立てるかが購入順を決めるのがこの箱の面白さです。
2人以下が主戦場なら東洋の翼を先に選ぶ、という逆転の結論になるでしょう。

初心者向け攻略:4ラウンド別の立ち回りで勝率を上げる

1〜2ラウンド目は、まず餌を集めて盤面を回し始める区間です。
鳥を置くには餌が要るので、ここで無理に点数へ寄せるより、テンポを切らさず次の手につながる形を作ったほうが安定します。
卵は弱いアクションでも2個産めるため後回しにでき、序盤は「1ラウンド目は卵を産むな、まず餌」と割り切るだけでも勝率が目に見えて上がります。

1〜2ラウンド目:餌とエンジンへの先行投資

1ラウンド目の役割は、手番を止めないことです。
餌獲得レーンには配置時効果の鳥を置き、置いた瞬間に次の行動へつながる流れを作ると、少ない手数でも盤面が前へ進みます。
筆者が初心者にインストするときも、「1ラウンド目は卵を産むな、まず餌」とだけ伝えると伸び方がはっきり変わりました。
早い段階で手詰まりを避けることが、そのまま失点の回避になるのです。

2ラウンド目は、資源を継続的に生むエンジンへ移るタイミングです。
ここで産卵レーンに起動時効果の鳥を置いておけば、毎回の起動が次の資源を呼び込み、3ラウンド目以降の伸びがまるで違ってきます。
アクション数は後半ほど減るので、早く組んだエンジンほど少ない手番で多く稼げる。
この逓減の感覚をつかむと、序盤の1手にどれだけ価値があるかが見えてきます。

3〜4ラウンド目:得点源とボーナス条件の回収

3ラウンド目以降は、得点源の確保へはっきり切り替えます。
ここで怖いのは、終盤になってから「まだ得点が足りない」と慌てて方向転換し、せっかく育てたエンジンを崩してしまうことです。
筆者も最初のころ、ボーナスカードの条件を序盤に見落として、終盤に無理やり鳥の種類を集め直して大敗したことがありました。
あの失敗で学んだのは、得点は最後に足すものではなく、最初から向きを決めておくものだということです。

ボーナスカードと目的タイルは、運の振れ幅をならす最大のテコになります。
先に条件を見て、その条件を満たしやすい鳥を集めれば、同じプレイでも得点の伸び方が変わります。
鳥の配置先もここで効いてきます。
餌獲得レーンには配置時効果、産卵レーンには起動時効果の鳥を置くと、役割と能力が噛み合って無駄が減る。
おすすめです。

集中ビルド:列を育てて起動回数を稼ぐ

集中ビルドは、1つの列を太く育てて起動回数そのものを稼ぐ考え方です。
本来は1種類しか資源をくれないレーンに別種の資源を生む鳥を差し込むと、3アクションのうち特定の起動回数を極端に少なくでき、同じ手数でも効率が跳ね上がります。
列が育つほど1回の起動で得られる価値が増えるので、単発の得点より、繰り返し回せる形を優先してみてください。

この発想は、初心者には少し先の話に見えるかもしれません。
ただ、盤面が読めてくると、どの列に投資すれば後半の行動が軽くなるかが見えてきます。
集中ビルドが強いのは、派手なコンボではなく、起動回数を絞って手番の密度を上げられるからです。
エンジンを点ではなく線で育てる感覚、ここを意識すると勝ち筋が安定します。

誰におすすめ?購入前に押さえたい選び方

中量級のエンジンビルドを初めて掘るなら、この作品は入口として扱いやすいです。
鳥や自然のテーマが前面に出ているので、手元で資源を回す楽しさと見た目の親しみやすさが両立し、ソロや2人で腰を据えて遊ぶと持ち味がよく見えてきます。
逆に、直接妨害で相手を揺さぶる緊張感や、競技的な厳密さを最優先する人には、少し温度が穏やかに映るでしょう。

向いている人・向いていない人

向いているのは、中量級エンジンビルドの入門者、鳥や自然テーマが好きな人、そしてソロや2人プレイを中心に遊ぶ人です。
カードや効果が少しずつつながっていく感触が分かりやすく、何を伸ばすかを考える時間そのものが楽しみに変わります。
対局の空気も荒れにくいので、勝敗よりも「自分の盤面が整っていく快感」を味わいたい人には合っています。

ただし、相手の手を止めるような直接妨害や、最後まで張りつめた対戦の緊張感を求めるなら、物足りなさが出やすいです。
競技性の高い読み合いを好む人ほど、どの局面でも明快に優劣が出る設計を期待しがちですが、この作品は育てたエンジンの気持ちよさが中心になります。
そこを魅力と見るか、刺激の弱さと見るかで評価が分かれます。

まずデジタル版で試すという選択肢

迷うなら、最初はデジタル版で触る流れが賢いです。
Switch版は1台で最大5人まで遊べて2000円未満、スマホアプリ・Nintendo Switch・Steamでも遊べるため、ルールの流れやエンジンビルドの手触りを低コストで確かめられます。
初見で買う前に一度回してみるだけで、処理の重さや好みの方向性がはっきりします。

筆者の周りでも、デジタル版で先に練習してからアナログ版を買った友人は、初回からエンジンをすっと組めて満足度が高そうでした。
ルール説明を受けながら慌てるより、操作の感覚を先に掴んでおくと、実物のカードを並べたときに「ここでこれを伸ばせばいい」と見通しが立ちます。
まず触ってみてください、という勧め方がいちばん自然でしょう。

拡張まで含めた長期コスパ

1〜2人プレイの満足度が特に高く、そこに東洋の翼を足すと少人数特化の深みがさらに増します。
2人暮らしの知人は基本セットに東洋の翼を加えてから、夜に1回遊ぶ流れがすっかり定番になりました。
短い時間でも盤面がきちんと育ち、次の一手を考える余韻が残るので、日々のルーティンにしやすいのです。

基本セットだけでも土台は十分に作れますが、遊び込んだあとに欧州の翼、少人数中心なら東洋の翼と段階的に広げる買い方が、満足度と出費の釣り合いを取りやすいです。
拡張を足すたびに遊びの軸が少しずつ変わるため、長く触るほど投資感が出てきます。
大人数のワイワイ系を求めるなら別ジャンルも候補になりますが、少人数で腰を据えて遊ぶ前提なら。

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戦略ゲームウイングスパンエンジンビルド拡大再生産拡張
相沢 遼介

ボードゲーム歴20年、所有数300個超。重量級ユーロゲームとカードゲームのメカニクス分析を得意とし、戦略の奥深さを論理的に解き明かします。

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